本研究は常温延性と強度とのバランスにすぐれた、配向性のあるラメラ組織をγ-TiAl合金に付与するプロセスを確立することを目的に、α単相域での加工により結晶集合組織を発達させた上で、二相域で熱処理、加工する加工熱処理法を実験的に検討したものである。初年度はこの方法による配向制御が可能であるか否かの実験的吟味を行いこの方法が有力であるとの結論を得た。第二年度は、二相状態での加工の際にγ相と共存する相がα_2相とα相のいずれが適しているか、二相状態での変形が主としてラメラ界面に平行なすべり系の活動によるのか、さらに二相状態での加工によりどの程度の配向制御が可能であるのかを知ることを目的に研究を進めた。 γ相と共存する第二相が異なっても圧縮変形後の顕微鏡組織には大きな差異は認められない。しかし、結晶方位分布の解析ではα_2が第二相である場合には加工後のラメラ界面が圧縮面に10度以内の位置まで接近したのに対し、α相が第二相の場合には20度程度までの接近にとどまっていることが分かった。このことは第二相の変形応力水準がラメラ配向の制御に大きな影響を与えていることを示している。二相状態での変形で大きな加工軟化が認められた。真歪-0.8変形後の組織には、面積率で5%程度の微細な単相等軸粒が存在していたが、組織は主として界面が圧縮面に平行に近い角度で配向したラメラ組織であった。変形前のラメラ組織の結晶方位分布をもとに、ラメラ界面に平行なすべりが優先的に活動するとして歪量と平均のシュミット因子の関係を評価した。その結果真歪が-0.3程度までは変形の振興と供にシュミット因子が増大することが分かった。すなわち二相状態での変形の際に認められた加工軟化が幾何学的軟化として理解できること、ラメラ界面と圧縮面のなす角度を二相状態での歪量によって制御できることが明らかとなった。
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