研究概要 |
ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンナフタレート(PET/PEN)共重合体の組成比100/0,95/5,90/10,85/15,70/30,50/50,30/70,10/90,0/100のものを合成した。溶融圧縮後,氷水中にクエンチしたアモルファス試料は何れの組成のものも,液体窒素温度では脆性的に破壊した。しかしながら,アモルファス試料をそのガラス転移温度付近で5倍,自由幅-軸延伸すると飛躍的にタフネスの増加する試料が現れることがわかった。この現象はPEN成分か10%程度の試料に顕著だった。PET/PEN=90/10共重合体について,他の延伸倍率の試料についても測定した結果,とくに5倍前後の延伸倍率の試料に特異的であった。このPET/PEN=90/10 5倍延伸試料を液体窒素温度で引っ張り試験を行う前と,行った後の試料について示差走査熱量計で分析した。低温での引っ張り試験の前の試料では,二種類の冷結晶化ピークが生じることが判明した。また,引っ張り試験後では,二つの冷結晶化ピークは共に低温側にシフトし,しかも発熱量は少なくなった。5倍延伸により特異な非結晶構造に変化し,この部分が液体窒素温度での外力に対して変化することができ,一部は結晶化,一部はより結晶に近い構造に変化したものと考えられる。延伸によりdefects構造が生成するため,極低温域(15〜100K)において誘電的tanδが,増加することも,240K付近に現れるβ緩和の緩和周波数と緩和強度が,延伸温度に強く依存することなども分かった。
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