研究概要 |
ポリエチレンテレフタレート(PET)に対してビフェニル(BP)とビフェニルエーテル(BPE)を10mol%導入したBP/PET及びBPE/PET共重合体とポリ(エチレン4-4′オキシジフェニレンジカルボキシレート)(PEOP)を合成した。溶融圧縮後,氷水中にクエンチしたものと、これを60°Cで5倍に自由幅一軸延伸したものを試料として種々の測定に用いた。BP/PETとBPE/PET共重合体の延伸試料は、液体窒素温度でも6〜10%程度の伸びを示した。PEOPは未延伸状態でも液体窒素温度で,前記の延伸試料に匹敵する破断伸度を示した。主鎖にエーテル結合を持つため,低温でも外力に対して変角や内部回転が可能なためと考えられる。これらの試料の複素誘電率測定(15K〜480K)と示差走査熱量計による測定から,延伸試料では結晶構造と非晶のほかにこれらの中間構造の部分が増大するとして実験結果をよく説明できることが分かった。中間構造の量と質を制御することで,極低温領域でも靱性を高めることが可能と考えられる。試料に歪みを与えながら赤外線吸収スペクトルがどの様に変化するかについても調べられ,エチレングリコール残基のコンホメーションの変化を追跡した。 種々の構造をもったポリイミドについても研究された。用いたいずれのポリイミドも液体窒素温度で,優れた機械的特性を示した。しかしながら,吸湿によって誘電特性が非常に敏感に変化した。とくに,室温付近より吸湿試料は誘電率が大きく減少するが,これは試料からの吸着水の脱離であることが,赤外線吸収スペクトルの温度変化から明らかとなった。吸湿は低温での機械的特性にそれほど影響しないことも分かった。
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