種々の機能性薄膜を作製した時に不可避に生ずる微小欠陥を検出する手法として、液晶のDSM現象による方法を提案し、その定量化を試みた。機能性薄膜の対象として、鋼材を基板にセラミック皮膜をRFマグネトロンスパッタ法で作製した。鋼材の高耐食化の研究の一環として多くのグループにより共同で進められているセラミックス被覆法は、その皮膜の種類、成膜方法などの検討がなされ、多大の成果を得ている。しかし、その過程の中で、皮膜に不可避に貫通欠陥が存在することが指摘され、それを定量化し評価する手法が模索されていた。本研究で提案した液晶DSM法では、他の手法にはない、欠陥からの腐食電流を可視化することが可能な手法として、その分解能の高さとあいまって注目を集めた。本研究では、これを進め欠陥位置の検出だげでなく、欠陥を定量化することを試みた。液晶DSM法により光学的に検出された欠陥は画像データとしてコンピュータに取り込まれ、DSM現象の電圧・電流による変化を皮膜欠陥からの電流分布のシミュレーション結果と照らし合わせることにより、欠陥の形状を評価し、欠陥の程度を定量化した。本システムでは、超高速での画像データの取り込みが可能であり、DSM現象の高速の時間変化を正確に処理することが可能である。液晶厚さ、電圧によりDSM像が影響されることを指摘し、その更正法を提案するとともに、本手法による欠陥の検出能限界も指摘した。これにより、貫通欠陥を非破壊で検出し、しかも定量化することが可能となり、耐食性皮膜だけでなく、他の多くの機能性薄膜の欠陥検出法への応用性を示した。
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