研究概要 |
宇宙・航空機用あるいは高効率を目標とする各種エンジン用の新しい耐熱構造材料として要求されるものは、第一に軽量性であり、さらに耐酸化性が求められる。その最も有力な候補材の一つに、今回申請した研究課題の「軽量熱Ll_2型Al_3Ti基合金」がある。本研究は、複雑なDO_<22>型の結晶構造を持つAl_3Tiの相安定性を変更し、より対称性の高い、常温延性が発現するLl_2型結晶構造相を得るため、第三添加元素の探索を行ってきた。本課題では主にCr、Mnを第三元素として添加した各種Ll_2型Al_3Ti基合金を作製し、その相関係(Al-Ti-Cr および Al-Ti-Mn三元系状態図)を明らかにするとともに、その物性・特性を解析・評価して材料開発を行った。 これまでの結果、Al_3TiのAlの一部(8〜14原子%)を種々の第三元素(Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ru,Rh,Pd,Ag,PtおよびAu)で置換することによってLl_2型構造の金属間化合物相になることがわかった。この中には今回新しく発見された添加元素が多数含まれている。中でも、Cr、Mn添加は延性改善効果が大きく、信頼できる材料が得られれば新しい軽量耐熱材料として大いに期待できることを明らかにした。このためには、Al-Ti-X系でLl_2型相を示す合金組成と相安定性、さらには隣接する第二相との相平衡関係を明らかにする必要がある。また、凝固過程ならびに各種熱処理による組織制御も追究しなければならない。本研究ではかかる問題に対してCr、Mnの添加量を従来と大きく変化(増加)させることにより、良好なインゴットが得られ、TiAlと同定度の延性(曲げ塑性ひずみで約0.9%)をこの材料で得ることに成功した。さらに、相平衡状態図を決定したことによって、相安定性を明らかにすると供に、組織制御が可能であることを指摘した。今後は、最も重要な脆性・延性の問題およびLl_2型相の変形機構などを追究する必要がある。
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