研究概要 |
Bi系2212酸化物超伝導体の拡散法による作製とその特性について研究を行った。 拡散法は、高融点の酸化物基材と低融点の塗布材との間の拡散反応により所望の超伝導相を得る方法であるが、平成7年度は、新設の小型等方圧加圧装置を用いて成形した中実円筒(直径3mm)基材の円周に沿って、ほぼ均等な厚さ(150μm)のBi-2212超伝導相を拡散法により合成できた。今回用いた基材の組成は、Sr : Ca : Cuの原子比が、2 : 1 : 2のBiを含まない酸化物であり、また、塗布材はBi : Cuの原子比が2 : 1の組成で、30wt%のAgを添加したものである。拡散熱処理は、大気中、830-850℃で、10-40時間行った。生成した超伝導相は、4.2Kでは8Tの強磁界下においても300Aを越える輸送電流としての臨界電流(lc)を通電することができた。これは、バルクとしては極めて高い21000A/cm^2以上の臨界電流密度(Jc)に相当する。また、臨界電流の温度一磁界特性によれば45K、0.5Tにおいて約50A以上のlc(Jc≒3600A/cm^2)が得られ、本バルク試料が、電流リ-ドや磁気シールド用材料として有望である見通しが得られた。このような高臨界電流密度は、拡散相が極めて高密度な組織であり、また、拡散方向に板状結晶が配向した効果であると考えられるが、拡散反応の詳細なメカニズムについては、なお研究の余地があり、さらに基盤の組成および形状の影響、Ag添加効果等を明らかにする必要がある。 なお、本研究については平成7年度低温工学・超伝導学会秋季大会において一部を発表し、さらに平成8年度国際低温材料会議(ICMC, Kitakyusyu)および応用超伝導会議(ASC, Pittsburgh)にて発表予定である。
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