電子シャワー法でITO薄膜を作製すると、VLS機構によるひげ結晶が多量に成長する。ひげ結晶の長さおよび太さは電子線照射により一様にする事が可能であった(長さ600nm、太さ30nm)。成長時間が300s以下では(a)ひげ結晶はガラス基板上に沿って成長するが、(b)成長時間が長くなると基板に対して垂直に伸びる。このひげ結晶を公害の原因であるNOxガス(本実験ではNO_2)のセンサーに利用した。その結果、(a)タイプのひげ結晶を用いると200℃、2000ppm(窒素希釈)で感度は340にもなり、(b)タイプまたは板状結晶と比べ、300倍以上であった。酸素希釈にすると感度は1桁下がり、500ppmのNO_2に対して感度は16であった。 AINのa軸配向膜は成膜が難しいとされていたが、電子シャワー法で容易に成膜することができた。さらにスパッタ法およびアークイオンプレーティング法でも条件を変えることにより同様な配向膜が得られた。共通していえることは、基板近傍の窒素イオンの割合を高くするとa軸配向膜ができるということである。 TiNは赤外線の反射率が高いためガラスへのコーティングが考えられている。スパッタ等に比べ電子シャワー法で非常に密着性の高い膜が得られた。スパッタ等の場合、ガラス基板との界面で酸化チタンを形成する。そのため、ガラスの一部がSiO_2からシリコンに還元され、ガラス内部から剥離していた。電子シャワー法による膜は界面に窒化珪素を形成するためにガラス基板の劣化がなく、付着力の高い膜が得られた。 基板を0℃以下に冷却することにより、窒化鉄をPETなどの高分子に成膜する事ができた。しかし、TiNについては基板の変形軟化が発生するため、現在まだ成膜には成功していない。
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