研究概要 |
平成7年度は、リボン材でも最も優れた特性が得られているFe_<86>Zr_7B_6Cu_1合金について、アモルファス合金粉末の作製法の確立、およびホットプレス法による固化成形の基礎的調査を行った結果、次に示すような研究成果が得られた。 1.アモルファス合金粉末の作製法の確立 (1)高圧ガスアトマイズ法では,9.8MPaの高圧Heガスを用いた場合でも,アモルファス単相の粉末を作製することができなかった.高圧ガスアトマイズ法により達成される冷却速度が本合金のアモルファス化に対して十分であり,本方法がアモルファス合金粉末の作製として適していないことが明らかになった. (2)一方,液体急冷法により作製したアモルファス合金リボンを遊星型ボールミルやスピンミルにより粉砕できることが明らかになった.特に,粉砕前のリボンの熱処理と粉砕時の液体窒素温度への冷却により脆化が促進され,粉砕に効果的であることが明らかになった.粉砕時間が600sでも,粒径150μm以下の粉末の回収率は91%以上であった. 2.固化成形法の確立 (1)ナノ結晶粉末の固化成形では,相対密度90.4%の低密度成形体しか作製できなかったが、非晶質粉末の固化成形により,圧力1.5GPa,温度853Kの条件で相対密度99.9%の高密度ナノ結晶成形体が得られた.これは,後者のプロセスでは,非晶質合金の結晶化温度近傍での粘性の低下を有効に利用できたためである. (2)非晶質Fe_<86>Zr_7B_6Cu_1粉末の緻密化マップを作成した.例えば,相対密度99.9%の高密度成形体を作製するためには,ナノ結晶粉末からナノ結晶成形体を作製する場合には4.4GPaの超高圧力が必要であるのに比べ,非晶質粉末からナノ結晶成形体を作製する場合には1.5GPaの圧力で充分であった.一方,非晶質粉末から非晶質相を保持した高密度成形体を作製するには,3.0GPaの超高圧が必要であった.固化成形時に非晶質相を結晶化させる方法が,ナノ結晶成形体を作製する上で最も適した方法である. (3)非晶質粉末から作製した高密度のナノ結晶Fe_<86>Zr_7B_6Cu_1成形体は,1.56Tの高い飽和磁束密度と優れた軟磁気特性を有していた.その保持力は33A/mであり,周波数1kHzでの実行透磁率は1300(H_m=0.8A/m)であり,周波数10kHzでの鉄損は37W/kg(B_m=0.1T)であった.
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