研究概要 |
平成8年度は、ナノ結晶およびアモルファス合金粉末の緻密化挙動を調査して粉末の固化成形技術を確立すると共に、高周波特性の向上を目的とした粉末の絶縁皮膜によるカプセル化法の確立と、最適合金組成の探査を行った結果、次に示すような研究成果が得られた。 (1)粉末の緻密化挙動の調査:ナノ結晶およびアモルファス合金粉末の緻密化挙動の温度と圧力と時間依存性を明らかにした。ナノ結晶粉末の緻密化は温度と圧力に依存したが、時間には依存しなかった。一方、アモルファス合金粉末の緻密化は温度や圧力のみならず時間にも依存した。 (2)粉末のカプセル化法の確立:ゾル・ゲル法により、粒径100μmの粉末に厚さ0.5μm以下の薄い絶縁皮膜で均一にカプセル化することができた。カプセル化したアモルファス合金粉末を固化成形することにより作製したナノ結晶成形体は、カプセル化することにより飽和磁束密度が1.59Tから1.50Tに若干減少すると共に保持力も33A/mから39A/mに若干劣化したが、高周波特性が向上した。例えば、カプセル化により周波数50kHzでの実行透磁率は200(B_m=0.2T)から240に向上し、周波数50kHzでの鉄損(B_m=0.2T)も1800W/kgから1200W/kgに抑えることができた。 (3)最適合金組成の深査:Fe-(Zr,Nb,Hf)-B合金にFe,Co,Ni,Cu,Siを数%添加した合金について,ナノ結晶材料の軟磁気特性と磁歪の調査を行った結果、Fe_<90-x>Zr_7B_3(Co,Ni)_x合金において優れた特性が得られた。ホットプレス法と押出し法を用いてアモルファスFe_<83>Zr_7B_3Ni_2粉末を固化成形することにより密度99%以上の高密度ナノ結晶成形体を作製することができた。作製したナノ結晶成形体は、1.5_8Tの高い飽和磁束密度と優れた軟磁気特性を有していた。その保持力は14A/mであり、周波数1kHzでの実行透磁率は2000(H_m=0.8A/m)であった。
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