近年、自動車排ガス浄化装置は従来のセラミックス製からメタル担体が主流となっている。使用されるメタルとしてはAl含有量の高いステンレス鋼を用いている。構造は平板に波板を重ねてつける方式がとられている。両鋼板の接着はNiろうによるろう付けによって行われるが、高Alステンレス鋼であるために高真空が必要であり、作業性の点で問題がある。 この点を軽減するためにステンレス鋼表面に酸素との結合力の弱いSnメッキ又はSnのスッパタリングを行うことによってろう付け作業を簡便にすることを検討した。 第一段階としてステンレス鋼板上へのSnメッキ条件を調査した。ステンレス鋼は不働態皮膜のために表面処理が非常に困難である。そこでメッキ浴中のSn^<2+>量と電流密度を調整することによって良好なメッキ条件を確立した。スパッタリングについてはメッキに比べ容易であるが厚みを調整するために予備実験を行って所定の厚みを確保する条件を確立した。 皮膜厚さは0.1〜1.0μmの範囲で変化させ低真空下(ロータリーポンプのみ)とアルゴン雰囲気でろうのなじみ易さを調べた。なじみ易さの評価はろう滴と鋼板のなす角度で判定した。その角度は皮膜厚さと共に減少するが、メッキの場合は0.3μm以上で飽和し、スッパタリングに比べてなじみ性は不良である。スッパタリングの場合は0.5μm以上で飽和し、低真空下でも高真空の場合と同程度のなじみ性を示す。アルゴン雰囲気は低真空下に比べ若干なじみ性が劣る。Snに続いて同じ効果が期待されるCuについて0.3μmまでのメッキについてのみ検討したが、Snメッキの場合と同程度又はそれ以下であり、低真空中に比べアルゴンの場合は不良であった。 ろう付け部分の組織観察、組成分析の結果、ろう部分に僅かな残留は見られるが、実質的にほとんど有意差はなく、実質上問題はないと考えられる。
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