研究概要 |
ハイス系白鋳鉄は高硬度炭化物を含み耐摩耗性に優れ、鉄鋼圧延ロールとして使われるようになってきた。圧延ロールは耐摩耗性とともに機械的性質、靱性などの強度も要求される。そこでハイス系白鋳鉄の性質を左右する晶出炭化物の種類、量、形態を定量化し、これらの炭化物の晶出挙動に及ぼす合金組成の影響を調べた。 試料には原材料を高周波溶解炉で溶解し、鋳物部(37.5mmΦ、高さ60mm)に押湯に付けた断熱スリーブ鋳型に鋳込んでだ。その成分範囲はC;2.0〜2.5、V;3〜5、Cr;2〜8、Mo;2〜5、W;2〜5mass%で合計8種作成した。この他に実用ロール材も用意した。これらを放電加工機にて小片に切断して研磨および腐食して光顕観察した.各炭化物の確認はアルカリピクレート、村上試薬、希釈村上試薬、塩酸ピクレート等の腐食液を用いてMC,M7C3,M2C,M6Cを識別して画像解析装置にてその晶出量を測定した。塩酸ピクラールでγ相を深腐食して炭化物の形態をFE-SEMで観察した後EDXにて元素分析を行った。また示差熱分析試験を行って、各相の晶出温度を調べた。 炭化物晶出量と成分元素の関係を回帰すると、MC=0.64V-1.79Mo/C+2.93、M2C=-0.82V+1.05Mo+0.79W-2.05、M2C=-0.82V+1.05Mo+0.79W-2.05、M7C3=2.51Cr-1.17Mo-0.60W+1.78となった。これらから、V量を増やすとMC量が増え、Mo、W量を増やすとM2C量が増え、Cr量を増やすとM7C3量が増えることが明確になった。EDX(FE-SEM)分析によるとこれらのV、Cr、Mo+W、の元素は、MC、M2C、M7C3の各炭化物の主な成分であった。これらからMC、M7C3、M2C等の炭化物晶出を左右するのは、その炭化物の主要な元素で、それぞれV、Cr、Mo+Wであった。
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