研究概要 |
金属中にC60分子を"固溶した"あるいは"ナノ分散した"合金ををMA(機械的合金化法)によって作製して,金属材料の強化機構として"分子"による"固溶強化"あるいは"分散強化"を利用することを試みた. 1.数μm程度のC60結晶(体積率20%)と電解銅粉(100μm以下)を窒素雰囲気でイットリア-ジルコニアのポットに入れて同材のボール(直径10mm)によって混合した.8h以上の混合では,銅の格子面間隔が0.05%程度広がるとともに銅の粒子寸法は10nm程度となり,C60相は消滅した.透過電子顕微鏡観察では,C60はグラファイトまたはアモルファスダイヤモンド状に変化した. 2.ミルボールの直径を3mmとして128h混合した.この試料では,透過電子顕微鏡観察では,C60粒子の存在が認められた.直径10mm高さ1mmに370MPaで圧縮成型して,100℃から700℃で真空焼鈍した.成型体の硬さ(HV)は,5%C60の試料では焼鈍温度とともに減少して600℃で200程度である.これは純銅の2倍以上である.20%C60の試料では,焼鈍温度によらず200程度である. 3.アルミニウム粉末を用いて,2.と同様の実験を行なった.X線回析によると,アルミニウム粒子のMAによる変化は小さい.成型体を得ることはできなかった.アルミニウムの成型の場合には,さらに強度の加工が必要である. 全体としては,ミルボールの大きさと相手の金属を適当に選ぶならば,C60をその中に分散した合金を造ることができると結論された.
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