研究概要 |
極高真空作成の基礎研究につづく開発基盤研究として、構造材料の表面から放出されるガスの評価と制御に関する研究を行ない、つぎの成果を得た。 1.平成7年度:成果の一つであり、新たに開発された表面改質法である、ステンレス鋼の表面に、六方晶窒化ホウ素(h-BN)を配向析出させる処理によって気体の吸着(とくにH_2Oの吸着)に不活性で、ベ-キングの不必要な表面を実用的に作成する処理条件を調査した。平行して行なわれた、配向析出の機構に関する研究から得られた知見に基づいて、引続き、h-BN析出への加工変質層の影響を更に詳細に解明して、h-BN層の最適析出条件を見出す研究に進んだ。 2.平成8年度:各種の表面研磨処理((1)メカニカル,(2)メカノケミカル,(3)電解,(4)電解複合,(5)ケミカル,(6)フロート・ポリッシュなどの研磨)がもたらす加工変質層の形成とh-BNの析出挙動との相関を組織的に解明した。加工変質層の導入が少ないことが電子線チャンネリングパターンから確かめられた、電解研磨をした表面上では、BNが表面に一様に析出せず、ダイヤモンドラッピングを施した表面上では厚いBN層が一様に析出していた。フロート・ポリッシュ表面では配向性の極めて高いBN層が析出した。この様な表面層は、試料内部からのH_2の拡散放出に対してバリア性をもつことが示された。新しい構造材料として関心がもたれているチタンについても、加工変質層とガス(H_2とH_2O)の脱離・放出の相関について興味ある新しい知見が得られた。
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