研究概要 |
液体処理したβチタン合金Ti-15V-3Cr-3Sn-3Al(Ti-15-3)は,350℃で等温時効を施してもほとんど硬化を示さないが,冷間加工を加えるとおよそ2時間でHV270からHV470まで顕著な硬化が認められ,加工導入転位の時効促進が確認できた.しかしPVD処理温度の500℃に時効温度を上げると,硬さは20%減少し,1時間の時効状態に戻った.これは時効性アルミニウム合金におけるGPゾーンの復元と非常によく似た現象で,析出α相の母相への再固溶による事がわかった.さらに500℃時効を進めると,再び同じα相が析出して硬さは上昇し,およそ2時間で極大硬さHV410を示した.そこでこれをβチタン合金の復元類似現象と名付け,このような現象を伴うことから,Ti-15-3合金への2段時効処理の有効性が認められた. 本結果を基に,冷間加工と第1段の350℃・1時間の前処理により500℃・1時間のPVD処理時に基材の強化もはかれる複合熱処理条件が明らかになった. 直ちに上記前処理を施したTi-15-3合金にPVD法によるセラミックコーティングを実行し,被覆材の評価を行う予定である.但し,工業用純チタン材を基材に用い,PVD処理によるTiNセラミックスを実際にコーティングし,その効果について予備実験を行った.その成果については,従来からの研究結果と併せて関西大学工業技術研究所機関誌“技苑"に投稿し,現在印刷中である.
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