研究概要 |
金属材料の耐食性,耐摩耗性を向上させるセラミックスによる表面処理技術が最近注目されている.現在セラミック被覆の適用は鋼に対するものが多く,非鉄金属材料に対するものは少ない. 本研究は先端材料の高機能化を目指して,冷間加工性と強度特性に優れたβ型チタン合金の耐摩耗性,耐焼付性の改善にPVD法によるセラミックコーティングを採用し,この処理と同時に基材の時効析出強化をはかる複合熱処理について検討した.βチタン合金は,高延性,高強度材料として注目されているTi-15V-3Cr-3Sn-3Al合金を基材に用いた.工業的なPVD法は,通常500〜800Kの温度範囲で1時間の処理を条件としている.そこで,Ti-15V-3Cr-3Sn-3Al合金の高強度化のための最終時効条件を773K-3.6ksの処理に目標を置き,本合金の時効挙動に及ぼす溶体化・時効温度および加工の影響を明らかにした. その結果,Ti-15V-3Cr-3Sn-3Al合金の二段時効とPVD法による773K-3.6ksのTinコーティングとの複合熱処理法を2種類明確にすることができた.それぞれの過程で複合熱処理したTi-15V-3Cr-3Sn-3Al合金は表面が黄金色を呈し,密着性に優れたTiNセラミックスの被覆と時効析出強化した基材は,複合効果でヤング率を溶体化処理材の75GPaから109GPaに上昇し,引張り強さ125GPaを示すと共に定常摩耗量を1/4に減少した.
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