研究概要 |
前年度において、高Al合金鋼の延性は低濃度の炭素の含有により著しく劣化することが明らかになったので、今年度は前年度よりさらに極低炭素の母材を用いて、機械的性質に及ぼすAl含有量の影響を検討するとともに、炭素を含む10%Al合金鋼について炭素固定用元素(Ti,Zr)の添加量を増加して,その効果を検討した。さらに、圧延加工性と耐食性を兼ね備えたAl合金鋼の開発を目的として、新たに5%Al合金鋼の機械的性質に及ぼすSi添加量の影響を検討した。 1.0.003%の極低炭素鋼を母材として用いた場合、Al含有量の増加とともに引張強さおよび硬さは増大し、伸びは著しく減少した。10%Al合金鋼の伸びは約2%で、0.01%Cの母材を用いた前年度の結果(15%)より減少した。 2.炭素の固定を目的として、0.045%Cの10%Al合金鋼に炭素の4倍当量のTiおよびZrを添加した。Ti添加の場合、炭化物はFe_3AlCからTiCに変化し微細化された。その結果、伸びは向上したが、圧延加工が可能なほどは向上しなかった。Zrの添加により結晶粒が著しく微細化されたが、Fe_2Zrが粒界に析出して網目状組織が形成され、むしろ脆化した。 3.実験結果および文献調査に基づき、高Al合金鋼は湿分を含む雰囲気中では本来環境脆化を起こしやすいものであり、根本的な延性改善策の確立は不可能と判断された。 4.最後に、環境脆化の防止と耐食性の確保を目的として、5%Al合金鋼の機械的性質に及ぼすSi添加の影響を検討した。その結果、約1%までのSi添加では十分な延性を有し、またこの組成では耐食性もかなり優れていると推定された。
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