Ce_2S_3は高融点、低蒸気圧、耐熱衝撃性に優れ、熱力学的にも安定である他、金属に類似した熱膨張特性を有し、温度によって異なる結晶構造を持ち、中でもCe_2S_3とCe_3S_4の固溶体である立方晶Th_3P_4型のγ-Ce_2S_3は熱伝導率が小さくかつ高温半導体であるため、宇宙空間用電源等の熱電変換材料として用途が期待されている。本研究では、Ce_2S_3粉末をCeO_2粉末から合成する方法として、従来法の硫化剤にH_2Sガスを用いた硫化温度が1473K以上の処理法に代わり、硫化温度の低下が期待されるCS_2ガスを用いた処理法に着目し、Ce_2S_3の生成過程について検討した。その結果、973Kにおいて低温で安定な斜方晶のα-Ce_2S_3の単相が得られ、その生成反応過程は、硫化温度が低温ではCeO_2からCeS_2までの硫化反応、高温ではCeS_2からα-Ce_2S_3までの炭素還元反応が各々主体であることを明確にした。そこで、不純物の混入を避けるために細心の注意を払ってCe_2S_3を調整し、その合成粉末を用いてホットプレス焼結を行い、焼結挙動について検討した。その結果、1200K前後から始まる大きな収縮率の変化が認められ、この収縮が原因となり焼結後の焼結体中に多数の亀裂が観察された。そこで、新たにα-Ce_2S_3を真空加熱により予めβ-Ce_2S_3粉末に不可逆変態させたものを焼結実験に供することにした。β-Ce_2S_3粉末を用いた場合、昇温中での大きな収縮率の変化が認められず、亀裂のない焼結体を得ることができた。 この様に本研究では、CeO_2粉末のCS_2ガス硫化によるCe_2S_3粉末の合成から引き続き、合成粉末の焼結挙動を明らかにし、Ce_2S_3セラミックスの一連の製造プロセスを構築することが出来た。
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