1.目的 融点が2723Kに達するCeSは、耐熱衝撃性にも優れ、金属と同程度の熱膨張特性を有し、低蒸気圧で熱力学的にも安定であるため、既に報告してきたCe_2S_3をも凌駕する高温材料と見なすことが出来る。本研究ではCeO_2のCS_2ガス還元により合成したα‐Ce_2S_3粉末を出発原料に用い、Ce_2S_3の金属Ce還元によりCeS粉末を合成すると共に、合成粉末の高純度化を目指したホットプレス法によるその焼結を試みた。 2.方法 CeO_2粉末をCS_2ガス中983Kにて28.8ks硫化することにより酸素含有量が1.3mass%で平均粒径が6.08μmのα‐Ce_2S_3粉末を合成した。続いて、Ceインゴットから削り出した粒径100〜200μmのCe粉末とα‐Ce_2S_3粉末を混合した後、混合物圧粉体を載せた黒鉛ボ-トを反応管内に挿入し、加熱前の真空度が2.7×10^<-4>Paの真空中1273Kにて10.8ks加熱することによりCeS粉末を合成した。なお、Ce粉末の作製から圧粉成形までの操作は全てAr雰囲気中にて行った。焼結実験はホットプレス法により5×10^<-5>Paの真空中で20MPaの圧力を加えながら0.33°/sの一定速度で昇温し、1773〜2173Kの所定温度において1.8ks保持する方法により行った。 3.結果 合成粉末のX線回折結果より、圧粉体のCe組成が50mol%では、CeSの生成量が少なく、未反応のα-Ce_2S_3の他に、Ce_2S_3とCe中のCeO_2との反応により生成したCe_2O_2Sも多く残存していた。しかし、Ce組成が60.3mol%になると微量のCeとCe_2O_2Sは残存するが、CeSの生成量が最も増大し、未反応のCe_2S_3も消滅した。次に、この微量のCeとCe_2Sが残存した酸素含有量が1.5mass%で平均粒径7.19μmの合成粉末を用いて焼結実験を行ったところ、焼結温度の増加と共にCe_2O_2Sの生成量は減少し、2173KにおいてX線的にCeS単相が得られ、酸素含有量も0.7mass%まで抑えることが出来た。この原因として、合成粉末中に微量のCeとCe_2O_2Sが残存していたため、Ce_2O_2S+Ce=CeS+2CeOの反応によるものと推察した。
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