昨年度のリンに引き続き、太陽電池用シリコン中の不純物元素について熱力学的考察を行った。太陽電池シリコンの不純物の中でチタンや鉄の熱力学的性質について、シリコンと相互溶解度の非常に小さい鉛を用いて測定を行った。原理的には、溶融鉛と溶融シリコンを平衡させ、鉛とシリコン中の鉄およびチタンの分配比を測定することにより得られるが、鉛およびシリコン中にそれぞれ不純物元素以外に僅かにシリコンおよび鉛がとけ込むためそれらの相互作用を無視できない。そこで本研究ではそれぞれの相互作用についても明らかにした。 まず、チタンの濃度を変えてシリコン-鉛間のチタンの1723Kにおける分配比を測定し、回帰分析によりシリコン中チタンの無限希薄状態における活量係数としてγ^0_<Ti(1)-Si>=4.48x10^<-4>、相互作用係数としてε^<Ti>_<Ti in Si>=3.97、ε^<Ti>_<Pb in Si>=13.2を得た。またシリコン-チタン二元系溶液の混合自由エネルギー変化として以下の関数を得た。 ΔG^M_<Si-Ti>=-188X_<Ti>+512X_<T′>^2-1720X_<Ti>^3 (kJ/mol) (X_<Ti><0.1) 同様にして鉄濃度を変化させてシリコン-鉛間の分配比を同温度で測定し以下の分配比を測定し、回帰分析によりシリコン中鉄の無限希薄状態における活量係数としてγ^0_<Fe(I)-Si>=2.85x10^<-2>、相互作用係数としてε^<Fe>_<Fe in Si>=3.17、ε^<Fe>_<Pb in Si>=14.1を得た。またシリコン-チタン二元系溶液の混合自由エネルギー変化として以下の関数を得た。 ΔG^M_<Si-Fe>=-135X_<Fe>+791X_<Fe>^2-4420X_<Fe>^3 (kJ/mol) (X_<Fe><0.075) 以上の結果から、リンに引き続き1723Kにおけるシリコン中のチタンおよび鉄の熱力学的性質を明らかにし、その除去の検討に非常に有用な知見が得られた。
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