研究概要 |
超伝導YBCO酸化物を融液+211相の状態から一方向包晶凝固させ、凝固中で急冷して123相のセル状ファセット界面を固定した。123相の包晶凝固機構について、123相のファセット界面の成長の駆動力である過飽和度を考慮した凝固モデルにより理論解析し、柱状晶成長条件及び211粒子残留過程とその分布を説明した。次いで、このモデルをさらに発展させるための研究を行った。まず、123相のセル界面を含む複数断面での界面形状から展開図を作製して立体構造を調査し、X線回折法によりセルを構成する各ファセット面の結晶方位を決定した。セルは主として結晶格子面(001),(100)或いは(010)の3面からなる三角ピラミッド状、或いは2面からなるプリズム状であった。セル先端では溶質拡散層が扇状に広がるため融液中の211粒子溶解量がより少なく、セル先端の凝固軌跡にそって中心部で211粒子が多い帯状領域が形成された。このため、この帯がプリズム状セルでは1帯、ピラミッド状セルでは3帯同時に生成した。そこで、このセル先端軌跡を利用して、セルを構成する各ファセット面の垂直方向の真の成長速度が算出できることを明らかにした。また、この結果はYBCOに銀粒子を複合したYBCO/Ag複合体の123相柱状晶でも同様であり、この場合は123相界面で取り込まれる銀粒子には臨界大きさがあり、セル先端では銀粒子の少ない帯状領域が形成されたため、211粒子の少ない領域との2重構造の帯状領域であった。凝固速度が約0.3〜0.5(μm/s)での各面の成長速度を求めた結果では、マクロな凝固速度Rの約0.5〜0.7倍の値が得られた。現在、さらにいくつかの試料についてファセット面のレッジ或いはマクロレッジ構造やミクロセル等による微細構造との関係も併せて調査中である。
|