研究概要 |
Y系超伝導酸化物において、融液+211相の状態からファセット型123相が一方向包晶凝固する機構についてこれまで主として1次元凝固モデルで解析してきたが、このモデルをさらに発展させるため、D.ShangguanとJ.D.Huntによる融液からの初晶のファセット成長に関する2次元数値解析の手法を組み入れることにより、ファセット型包晶凝固の2次元数値シミュレーションができることを示し、その解析原理と方法を明らかにした。過包晶組成のYBCO(fs_<2110>=0.43,rm=2.6,sg=1.7)について、初期融液中の211粒子分布を実測で得られた対数正規分布で与え、ファセット型123相の包晶擬固をシミュレーションした結果は、計算パラメータ:(a)最大擬固速度Rk(Rmax),成長/溶解速度係数比ag/am=0.1、バルク融液中の拡散係数と界面での拡散係数の関係D(bulk)=5Dg(in terface)、及び(b)平均凝固速度Rk(Rav),係数比ag/am=0.1,D(bulk)=2.5Dg(interface)の2種類の条件では、いずれの場合も123相中の211粒子分布及び界面前方融液中の211粒子の溶解挙動について実験結果との良い一致を得た。また、123相中の残留融液孔の分布、特にセル境界部により多くの液相孔があることも実験と良く合う結果を得た。以上より、ファセット界面はバルク融液の拡散係数Dとは異なる界面拡散係数Dgをもち、また123ファセット界面前方の融液中211粒子分布から生じる局部的過飽和度(過冷度)に影響され得ることが示唆された。さらに、Pt添加により211粒子を微細化した亜包晶YBCO(fs_<2110>=0.32,rm=0.80,sg=1.7)での計算結果も実験結果と良く一致した。また、以上の成長過程を支配するパラメーター(rg/rm,D,Dg,Rmax或いはRavなど)の詳細を明らかにするには、理論的には更に成長モデルの最適化および上記パラメーターと計算結果の最適化、実験的には上記パラメーターおよび融液中の溶質分布などの精密測定等の研究が必要であることを指摘した。
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