黒鉛坩堝を使用したBridgman法(炉温降下法)におけるFeTi金属間化合物単結晶の成長過程を明らかにすることを目的として、融解前のFeとTiの組成、成長過程における固液界面の温度勾配および成長速度を変化させて結晶を育成し、結晶組織との関係を調査して以下の結果を得た。 (1)温度勾配3.8K/mm、成長速度0.73μm/sの条件でFeとTiの組成を50at%Ti〜80at%Tiの範囲で変化させたところ、57.5〜60at%Tiの組成で単結晶が得られた。坩堝と育成した結晶との接触部分では炭化物(TiC)が形成されていることから、成長過程における融液のTi濃度はこれより小さい値であると考えられる。 (2)組成を60at%Tiで一定とし、温度勾配を2.0〜4.3K/mm、成長速度を0.65〜1.8μm/sの範囲で変化させて結晶を育成したところ、温度勾配4.3K/mm、成長速度0.65μm/sの条件では単結晶が育成できたが、これより小さい温度勾配および大きい成長速度では成長方向に長くのびた柱状晶からなる結晶が得られた。また、結晶の最終凝固部である上端では、状態図状包晶線を通る組成より高いTi濃度の融液から凝固した場合に予想される共晶組織は観察されなかった。 以上の結果より、FeTi金属間化合物単結晶は、化学量論組成に近い組成の融液から包晶反応を経ずに融液からの析出により成長するものと考えられる。これは、単結晶育成条件下では、平衡状態が実現するだけの時間的余裕がなく、包晶反応が生じないためと思われる。
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