状態図上包晶反応を経て形成される金属間化合物の単結晶育成の基礎技術の確立を目的として、炉温降下型Bridgman炉をもちいて、高融点金属間化合物の一つであるFeTi金属間化合物単結晶の育成を行い、その成長機構を検討した。融解前の組成がFe-57.5〜62.5at%Tiの範囲で単結晶が得られた。結晶育成時、るつぼ材のカーボンとTiが反応して結晶表面に炭化物層が形成されることから、Fe-72〜84at%Tiの組成範囲で結晶を育成して共晶点を通る組成よりカーボンと反応するTi量を求めたところ、約8at%であった。従来、状態図上包品反応を経て形成される化合物の単結晶化は、包晶反応をさけた融液組成から一種のフラックス法で行う必要があるとされている。しかし、上記の結果からFeTiの場合は、ほぼ科学量論組成の融液から包晶反応を経ない非平衡の凝固により化合物が形成されると考えられる。さらに、融解前の組成をFe-60at%Tiの一定とし、結晶育成時の固液界面近傍の温度勾配と成長速度を変えて組織変化を調べたところ、温度勾配と成長速度によって結晶のミクロ組織が変化し、温度勾配が大きくなるほどかつ成長速度が小さくなるほど組織が多結晶からデンドライト状単結晶へと変化した。このことから、FeTi金属間化合物単結晶は、包晶反応を経ず、非平衡の凝固より、固溶体的な成長をするとの結論を得た。
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