研究概要 |
本研究の目的は,FTIRとクロマトグラフィーを用いて,超臨界流体相の吸着挙動を分子論的および熱力学的に研究することであった。平成7年度の研究成果を以下にまとめる。 1.超臨界CO2に微量に溶解した有機溶媒がシリカゲルへに吸着するときのIRスペクトルを,常圧から150気圧まで透過法で測定した。これまで測定した溶媒はメタノール,アセトン,トリエチルアミン,アセトニトリル,テトラヒドロフランであるが,アミンを除く有機溶媒+CO2/シリカゲル系のIRデータは,超臨界領域で圧力が増加すると有機溶媒の吸着量が減少する結果が得られた。この結果は計算機シミュレーションで計算された吸着特性と同じであって,超臨界流体への溶解度が増加することにより流体相への分配が増加するが,溶媒分子の競争吸着による排除も無視できない要因であると推定できる。 2.重水素メタノールの吸着実験では,表面シラノールのOHと重水素メタノールのOD間の交換反応が起こり,表面に露出したシラノール基の割合が約30%であることがわかった。 3.超臨界流体クロマトグラフがほぼ完成し,IR測定に用いたシリカゲルをカラムに詰めてアセトン+CO2系のクロマト実験を行った。予備的なクロマトの保持容量のデータが得られ,クロマトのパルス応答をIR実験の条件に換算すると吸着スペクトルがほぼ再現する結果を得た。この結果の意味することは,水素結合が関与する吸着系では振動状態の変化と吸着量が対応しており,吸着分子のほとんどは水素結合しているということである。
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