本研究は、IRスペクトルとクロマトグラフという異なった原理の測定結果から、超臨界流体中での吸着特性を解明したものである。スペクトル測定では、超臨界CO_2中に微量に溶解した有機溶媒がシリカゲルへに吸着するときのIRスペクトルを、常圧から150気圧までにわたって透過法で測定した。これまで測定した溶媒はメタノール、アセトン、トリエチルアミン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルである。アミンを除く有機溶媒+CO_2/シリカゲル(SG800)系の水素結合OHバンドのIRデータから、超臨界流体領域では圧力が増加すると有機溶媒の吸着量が減少する結果が得られた。この結果は計算機シミュレーションで計算した吸着特性と同じであって、超臨界流体への溶解度の増加によって流体相への分配が増加するとともに、溶媒(CO_2)分子の競争吸着による溶質の排除が起こって溶質の吸着量が減少することが推定される。 市販の液体クロマト用ポンプを利用して超臨界クロマト装置を新しく製作し、超臨界CO2中の微量のアセトンおよびベンゼンのSG800への吸着量を測定した。得られたクロマトグラムは大きなテーリングを示し、(a)吸着量の値がECP法による解析から得られること、(b) SG800の表面は不均一表面であること、がわかった。本研究による結論は以下の通りである。(1)クロマト測定から得られたアセトンの吸着等温線はIR測定から得られたものと定性的に一致する。(2)クロマト測定からの吸着等温線は高圧領域でより大きく減少する。この理由は水素結合より弱いファンデルワールス力の吸着への寄与が減少するためである。(3)スペクトル的にはSG800との水素結合を示さないベンゼンの吸着等温線と水素結合を示すアセトンの等温線は定性的に同じである。
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