研究概要 |
褐炭・亜炭等の低品位炭は、れき青炭と比べて表面親水基が多く、一般に固有水分含有率が高いのが特徴である。従って水分の除去及び表面改質を行うことにより、れき青炭と同様の高濃度スラリーを調製する技術の確率が望まれている。水分除去は乾燥操作にならざるを得ないが、単に百数十度の乾燥を行うのではなく300〜400℃近辺での高温、高圧条件下での熱処理を行うことが考えられている。これにより、水分除去と表面改質、細孔分布の制御を行うことが可能であり、従来の研究では350℃近辺での熱水処理により褐炭・水スラリーの高濃度化が或る程度可能であるとの結果が得られている。しかしながら、熱水処理プロセスは高圧操作となる為、必ずしも容易に行える操作では無い。これらのことを考慮して、本研究ではこれまで、真空乾燥とタール分蒸着プロセスを組み合わせた改質プロセスを開発してきた。詳細なデータは平成8年秋の化学工学会秋季大会に発表する予定である。概略のプロセスは以下の通りである。 [1]150〜200℃で低品位炭を真空乾燥し、水分除去と多少の揮発分のタール化による細孔内タール閉塞を生じさせる。 [2]外部からタール蒸気を注入し、300℃でタールの細孔内拡散を行わせ、温度降下により細孔内表面及び低品位炭粒子表面へタールコーティングを行わせる。 [3]上記の改質プロセスと、改質炭の最適粒度分布の調整、添加剤の最適化を組み合わせて、低コストの高濃度改質炭スラリーの製造を行う。 平成7年度にバッチ式オートクレーブを用いて上記の改質スラリー化実験を行った結果、インドネシア産の亜炭(バンジャサリ炭)について石灰個体分62wt%、見かけ粘度0.5Pa・sのスラリーを調製することに成功している。現在のところ得られた改質炭の量が少ないため、最適粒度分布の調整は行っておらず、今後粒度分布の調整と添加剤の選択によりより高濃度のスラリーを調製可能であると考えている。また、上記の改質プロセスにおける温度圧力条件は、真空乾燥時は200℃に設定し、タール蒸着時には温度;270℃,圧力20気圧に保持した。なお、圧力についてはバッチ式オートクレーブのため、タール封入後の圧力調製が利かないので上記の圧力になったが、連続式で行う場合は圧力はもっと低く設定できると考えられる。なおタール蒸着量は個体石炭量の1.5wt%であった。 上述の実験結果は本研究で提案している改質プロセスが、低コストの低品位炭改質スラリー化プロセスとして有効であることを示唆している。
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