基礎的検討を目的に微細気泡と懸濁物質との凝集・浮上分離特性について調べた。微細気泡は電解法で発生させた。衝突・浮上過程は乱流場における凝集理論で表すことがで、浮上槽内の混合状態を多段槽型モデルで近似することにより、浮上分離過程をシミュレートできた。この成果は既に学会誌に掲載済みである。 気泡導入式液体サイクロンを用いた研究では、油中気泡分離用サイクロンを応用して実験的に行った。この型のサイクロンでは、旋回流を利用して中心部に集めた気泡を細孔を通してオーバーフロー中に排出することにより分離を計る。油水エマルションの分離を目的に、流入口に設けた多孔性ガラス膜製スパージャーを用いて気泡を混入したところ、油分の濃縮度は一定気体流量下では流入流量の増大とともに向上した。これは、遠心力が増すほど、微細な気泡の分離が可能となるためであろう。ここでオーバーフローとアンダーフローの油分濃度比を濃縮度と定義した。また一定流入流量下では、濃縮度を最大とするような気体流量が存在した。このことには、サイクロンの構造が大きく関係しており、微細気泡が細孔を通過する際に油滴の脱離が生じる、いわゆる油滴排除効果が働いているためと思われる。以上では最適操作条件下でも、濃縮度は高々1.1程度である。そこで界面活性剤を混入させることにより濃縮度の向上を計った。カチオン性活性剤CTAB 50mg/lの添加により、濃縮度は約1.5と顕著に改善された。活性剤は気泡を微細化し均一に分散させるため、油滴排除効果が一層向上したものと思われる。この成果は化学工学会飯塚大会にて発表予定である。 以上のように、気泡導入式サイクロンでは、気泡の微細化にポイントがあり、今後、分離機構の理論的解明とともに、気泡吹込み法の改良などを進めれば、一層の高濃縮度が達成可能と思われる。
|