気泡導入式液体サイクロンによる油性排水の分離特性について検討することを目的とした。サイクロンは、エンジンの潤滑油中の微細気泡を除去するなどのために製作されたもので、通常のサイクロンとはやや異なり、通常のサイクロンの空気コアに相当する箇所に、細孔を有する円管が設けられており、オーバーフロー側となる。また円錐部に開けられた細孔からの流れがアンダーフローとなる。 基本的な性能を調べるために、微細油滴を含むモデル排水を用いて、気泡を導入しない場合の分離試験を行った。その結果、オーバフロー側に流出する油分量と全流入油分量との比で定義される油分除去率は、オーバーフローとアンダーフローとの流量比、すなわちスプリット比が0.35近傍で最大値約80%をとった。流入油滴の平均径は30〜70μmの間にあった。また除去率は、入口平均油滴が同一であれば、原液流量の増加とともに増大した。これは、分離限界粒子径が原液流量の1/2乗に反比例して減少するためである。 気泡導入下の油分除去率はスプリット比および気体吹き込み流量の増加とともに増大し、気体流量が多い場合には、スプリット比約0.5において最大90%に達した。しかし低気体流量下では、除去率はスプリット比によらずほぼ0.5で一定となり、気体吹き込みによる効果はほとんど見られなかった。これは、気体吹き込みにより、むしろサイクロン内の乱れが増し、遠心効果を弱める方に働いたことによると思われた。 また界面活性剤が排水中に混入した場合、除去率が最大となる気体流量は混入していない場合の最適気体流量の約1/3に減少した。これは、主に界面活性剤により表面張力が低下し、気泡径が小さくなったため、油滴が気泡に随伴しやすくなったことによると推測された。以上の結果に基づき、サイクロン内の液体回転流に気泡が同伴する場合についてのモデル化を行うことにより分離機構について考察した。
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