研究概要 |
本研究では,太陽エネルギーの有効利用を目的として,形状安定化高密度ポリエチレンを用いた蓄熱装置の開発研究を行った.その結果,以下の成果が得られた. (1)蓄熱体同士の接触状態の変化が伝熱現象の及ぼす影響 蓄熱槽内に粒状の蓄熱体を充填し,高・低温の流体を交互に流した.融解・凝固を10回程度繰り返すと,充填高さはしだいに低下した.これは,粒状の蓄熱体が相互間に融着したためである.ただし,この場合の融着は強固なものではなく,容易に手で分離できる程度である. (2)蓄熱体と熱媒体間の熱伝達係数の算出 蓄熱体相互間に融着状態を形成させた蓄熱槽において,蓄熱体の相変化を生じさせない条件で蓄熱・放熱実験を行い,測定温度からSchumannらの方法を用いて,蓄熱体と熱媒体間の熱伝達係数を求めた.その結果,熱伝達係数の値は,従来の知見から予測される値に比べてかなり低くなることがわかった.これは,融解・凝固履歴によって生じた粒子相互の融着が,粒子間の面接触状態の増加と,それに付随して粒子間隙流路域で死水域の増加をもたらすためである. (3)蓄熱槽内流動・伝熱モデルの構造 蓄熱槽内に偏流はなく,円柱粒状の蓄熱体をその比表面積径を直径とする球体と考え,その球体内では半径方向の伝導伝熱のみが生じ,粒子相互間の伝導伝熱は無視できると仮定して流動・伝熱モデルを提案した。蓄熱体と熱媒体間の熱伝達係数には(2)で求めた値を用いて蓄熱槽内温度分布の経時変化を計算した.
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