平成7年度の研究計画では、液体金属の自然対流に磁場を印加することによる伝熱促進についての理論的、実験的解明を目的としていたが、理論的には、磁場下における立方体容器内の液体金属自然対流について、三次元数値解析を行ない、以下の結果を得た。 液体金属流れの磁場下での数学的モデル(Navier-Stokesの微分方程式など)を差分方程式に変換し、数値的誤差ができるだけ小さくなるように、高次精度の離散化を行なうと同時に約10万点の不等間隔計算格子を採用した。その結果、文沢の実験結果のように、液体金属自然対流は、磁場下において伝熱促進するという結果が得られた。具体的には、ある方向から外部磁場を印加することによって、10パーセント程度熱伝達が向上することがわかった。このとき、伝熱促進するための条件がいくつかあることもわかった。まず、外部磁場の方向であって、加熱面、冷却面に平行で水平な磁場の方向にのみ伝熱促進効果が存在することがわかった。それ以外の方向では、磁場を強くすると急激にに対流も抑制される結果が得られた。それから、磁場の強さである。弱い磁場下では、磁場の強さとともに熱伝達率が増加し、ある値で最大値をとった後、それより強い磁場下では、抑制していくことがわかった。この結果は、文沢の実験結果と比較して、ある磁場強さにおいて最大の熱伝達率をとるという点で一致する。しかし、加熱面近傍の温度分布は文沢の実験結果との一致を見なかった。今後、実験を行ない、計算結果との比較検証する必要があると思われる。
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