文沢の実験結果などのように、外部磁場を印加することにより熱伝達率が大きくなることが報告されていたが、理論的な説明がなされていなかったためか、これまであまり注目されていなかった。そこで、我々の研究計画では、液体金属の自然対流に磁場を印加することにより伝熱促進するということを検討し、またその理論的説明を加えることを目的とした。このテーマについて解析的、実験的に検討した結果、以下の知見を得たのでここに報告する。 差分法を用いた非定常三次元数値解析の結果、非磁場下での液体金属のような低プラントル数流体の自然対流は、三次元性の強い流れであり、非定常現象であった。そこへ、主循環流に平行な磁場を印加すると、流れ場は磁場の方向に対して整流され、その結果、5から10%ほどの熱伝達率の上昇、つまり伝熱促進することがわかった。強磁場下では、流れ場は磁場の方向に対して速度勾配が無く二次元的になり、熱伝達率は若干減少した。この伝熱促進現象についての理論的説明については、電流密度を可視化することにより明かにした。 実験では、液体金属としてガリウムを用い、一様熱流束加熱、等温冷却の自然対流実験を行った。熱伝達率は、加熱面と冷却面の温度差を計測することにより算出した。その結果、加熱面と冷却面の温度差が最小になる磁場強度の存在を確認した。これは、その磁場強度において最大の熱伝達率をとるということを意味する。また、そのときの熱伝達率の上昇は約5から10%であり、三次元数値解析結果との定量的一致をみた。 また、チョクラルスキー結晶成長における融液の振動特性を実測し、今後の磁場印加効果を検証のための基礎資料を得た。
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