今年度はオーストラリア産のビクトリア褐炭のイオン交換特性を解明するために以下の3点について検討した。 1.鉄交換量への前処理の影響 Yallourn炭の前処理としてNH_3、Na及びCa交換を行い、この試料と原炭のFe交換量を比較した。原炭では約0.3mmol/gであったFe交換量が前交換炭では2〜4倍に増加し、残存Na、Ca量は0.1mmol/g以下となった。特にFe交換量増加が顕著であったCa前交換炭についてCa量とFe量の関係を見てみると良い相関関係が認められた。このことから酸型よりも塩型試料の方がFeとの交換は容易であり、一旦結合したCa等がFeと置換することが分かった。 2.イオン交換量への有機溶媒添加の効果 熱処理を施したLoy Yang炭を用い、Co、Mg交換時の有機溶媒添加(アセトン、メタノール及びエタノール)の効果を検討した。熱処理炭は水溶液中では交換しないが、有機溶媒添加により交換量は増加した。その増加の挙動は膨潤度とほぼ一致した。また、カチオン種による交換量の違いからポアサイズとカチオンサイズの関係を見出した。更にイオン交換量の対数はpHと直線関係にあり、その傾きはカルボキシル基と金属との結合数を示し、切片は平衡定数や金属とカルボキシル基との接近性、結合性などを表していることが分かった。 3.イオン交換速度の検討 試料としてLoy Yang炭を用いた。カチオン種により交換速度に違いがみられ、その順はCa>Ni>Feとなった。また、カチオン濃度が高い場合に交換温度による交換速度の違いがみられた。エタノールを添加した場合、交換速度は変わらずに最大交換量の増加が見られた。
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