本年度は褐炭の低温熱分解時の高次構造を解明するために水酸化ナトリウムによる抽出実験、膨潤度実験及び金属塩混合溶液からのイオン交換実験を原炭及びカルシウム交換炭について行った。 1.水酸化ナトリウムによるフミン酸抽出実験 原炭の場合、熱処理温度の上昇に伴い、徐々にフミン酸抽出量は減少した。一方、カルシウム交換炭では、300℃まではフミン酸抽出量は50%と多く、350℃以上の熱処理では殆ど抽出されなかった。 2.膨潤度実験 原炭の場合、熱処理温度の上昇に伴い、膨潤度は減少した。一方、カルシウム交換炭では、250℃まで膨潤度は低い値で一定であったがそれ以上の温度では急激に増加した。 以上の結果から原炭では熱処理温度の上昇に伴い、官能基等の分解が起こり、新しい共有結合ができる。それに対し、カルシウム交換炭の場合、250℃までは大きな変化は起こらない。それ以上の温度では共有結合は切断し、低分子化が進行するが、それらは非共有結合により褐炭内にとどまっていることが示唆される。 3.イオン交換実験 カルシウム交換炭についてのCo-Ni混合溶液からのイオン交換選択性を検討した結果、全pH範囲においてNi選択率はほぼ50%であった。これはCoとNiの水和イオン半径やカルボキシル基との結合性にあまり差がないためと考えられる。Co-Mg混合溶液からの実験では低pH側ではMg、高pH側ではCoの選択率が高くなった。また、熱処理温度の上昇に伴い、低pH側でのMg選択率が上昇した。これは低pH側では水素結合が多くなり、褐炭の構造が締まり、小さい水和イオン半径を持つMgが選択的に吸着し、高pH側では水素結合が切れ、水和イオン半径の大きいCoが褐炭内部に入れるようになるため選択性は上昇すると思われる。
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