研究概要 |
平成7年度において、スチレン/メチルアクリレート共重合体を多孔性高密度ポリエチレン基材の孔中に充填した膜を、プラズマグラフト重合法により作製することに成功した。この共重合体組成変化による種々の溶媒との相互作用の変化を、Unifac-FV法を用いある程度定量的に予測することに成功した。これにより、分離系に対し最適な溶解性を持つ分離膜を、本研究で提案した指針により設計できることが示唆された。 この共重合法を用いた中空糸状膜の作製にも成功し、メチルアクリレート/アクリルアミド共重合体を基材孔中に充填した。中空糸状基材は平膜基材よりも機械的に弱いという欠点があるが、充填ポリマーを共重合体とすることにより、高い選択性を得られることも明らかとなった。 研究の評価 平成7年度において以下のような点で、予定通りの成果を得ることができた。(1)当初、考えていた溶解度パラメーターによる予測では、定量的な溶媒との相互作用が予測できなかったが、Unifac-FV理論を用いることにより定量的な予測に成功した。(2)中空糸状共重合体膜の作製にも成功した。(3)グラフト重合相は指針通り基材孔中を埋めていることを、ESCA,顕微FT-IR法により確認した。(4)これらの膜は非水系有機溶媒について高い選択透過性を発現した。しかしながら、以下のような検討課題も残した。(1)膜の設計のためには膜溶解性の制御だけではなく、膜中での溶媒の拡散性についての検討も必要であることが示唆された。(2)指針に一般性を持たせるためには、今回用いた分離系だけでなく、より広範囲な系についても検討する必要がある。
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