平成7年度において、スチレン/メチルアクレート共重合体を多孔正高密度ポリエチレン基材の孔中に充填した膜を、プラズマグラフト重合法により作製することに成功した。この共重合体組成変化による種々の溶媒との相互作用の変化を、Unifac-FV法を用いある程度定量的に予測することに成功した。これより、分離系に対し最適な溶解性を持つ分離膜を、本研究で提案した指針により設計できることが示唆された。 この共重合法を用いた中空糸状膜の作製にも成功し、メチルアクリレート/アクリルアミド共重合体を基材孔中に充填した。中空糸状基材は平膜基材よりも機械的に弱いという欠点があるが、充填ポリマーを共重合体とすることにより、高い選択性を得られることも明らかとなった。 平成8年度において空気中からのVOCを除去する膜を設計した。設計のためには実験からのパラメーターを用いずに、その溶解性・拡散性および透過性を予測する必要がある。VOCとしてはガソリン中に含有される有害なベンゼンを対象とした。Unifac-FV理論によりベンゼンの溶解性をポリマーおよびベンゼンの分子式のみから予測し、実験値と一致することを確認した。また、Free-Volume理論を用い各種ポリマー中でのベンゼンの拡散性を予測し、実験値と予測値が一致することを確認した。基材の膨潤抑制力を表す理論を構築し、この理論により膨潤抑制力が表現できることを示した。また、これらの予測値を基に、ベンゼンのフィリング重合膜透過性をフィッティングパラメーターなしに予測することに成功した。様々なポリマーを充填したフィリング重合膜を想定し、化学式、物性値のみからベンゼン透過性を予測し、ここで挙げた膜設計指針が有効であることを示した。また、ブチルアクリレートを充填した膜はベンゼン/窒素の分離系数が200以上の高い選択性および透過性を示した。
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