本研究は微細藻類の一種で高い原油分解能を有するPrototheca zopfiiとChlorellaとの細胞融合を試み、光合成による増殖が可能なハイブリッド藻を作製し、その原油分解特性と工学的な利用可能性(原油流出による海洋汚染の防止)を検討することを目的とした。 まず、P.zopfiiをATCC、C.saccharophilaを東大分子細胞生物学研究所よりそれぞれ入手して、P.zopfiiはグルコース、C.saccharophilaはCO_2を炭素源として増殖させる培養操作法を確立した。前記2種の藻から細胞壁分解酵素を用いてプロトプラストを調整した。このような微細藻類のプロトプラスト化はひじょうに難しく、特にP.zopfiiについてはこれまで報告がないので、酵素の種類と濃度、処理直前の細胞の増殖期、処理温度のプロトプラスト化に及ぼす影響を詳細に検討し最適条件を見出した(その内容は、外国誌に投稿中)。 次に、調整した2種の藻のプロトプラストの混合液に対して、電気細胞融合装置を用いて細胞融合を試みた。融合株と思われる藻細胞が顕微鏡観察により認められたが、その出現頻度が低いため現時点ではその単離に成功していない(論文準備中)。 最後にこの石油分解藻の工学的利用可能性を検討するため、P.zopfiiをアルギン酸カルシウムゲルに固定し、C14-C16の飽和炭化水素に対する分解特性を固定化しない場合と比較して、固定化が極めて有望であることを確認した(論文投稿中)。
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