本年度は、昨年度の研究で明らかになった高流動性高品位膜を形成するイオンクラスターを大量に生成するため、イオン源として沿面コロナ放電装置を用いたイオン化CVD成膜装置を作製した。沿面コロナ放電装置でイオン化された窒素ガスは、反応炉入り口でTEOS蒸気およびオゾンと混合され、反応管に導入される。反応管中にはメッシュ電極が流れに垂直に設置されており、基板がセットされる。この電極に直流電圧がかけられると、電界が原料ガスの流れと同じ方向に形成され、イオン化されたTEOS蒸気はこの電界によりメッシュ電極上の基板に沈着する。メッシュ電極は、反応管内を管軸方向に移動ができるため、電圧ともにTEOSイオンの反応時間を任意に変えることができる。 膜の形成に対するイオン化の影響を明らかにするため、ベアSi基板上への膜形成により成膜速度およびFT-IR測定、トレンチSi基板上の膜のSEM観察より膜の流動性を測定した。薄膜の形成速度はイオン化することにより、反応管内の位置に関わり無く、2から4倍早くなった。メッシュ電極の電圧は成膜速度に影響を与えなかったが、これは沿面放電装置の放電極が形成する電界が、メッシュ電極による電界よりも1桁以上も大きいためである。膜のFT-IRスペクトルは、イオン化された膜がイオン化しなかった膜よりもOH基およびOR基の吸収が小さいことを示した。膜の形状は、イオン化しなかったとき、等方成長を示したのに対し、イオン化膜は高い流動を示した。また、CVD反応装置内での粒子発生は、イオン化よりはぼ完全に抑制された。
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