研究概要 |
リン酸マグネシウム6水塩(MAP)は、弱塩基性下、生活排水処理、特に嫌気性消化脱離液の処理の過程で生成することが知られている。本研究では、このMAP晶析現象を利用し、汚泥の脱水処理過程で排出される高濃度の窒素、リンを含有する排水にマグネシウム塩を添加することにより、再利用可能なMAP結晶の形で除去、回収するプロセスを確立することを目的としている。本年度は、その第1段階として、回分操作による反応晶析法の適用を試み、MAP結晶の特性を調査解析した。MAP結晶を選択的に生成する操作条件としては、NH_4^+過剰で、かつMg/P(モル比)が3.0以下、pHは9-10が最適であることを明らかにした。この条件を満たさないと、リン酸マグネシウム塩や水酸化マグネシウムが生成し、効率的な除去ができないことを見いだした。さらに,MAP結晶が選択的に生成する操作条件下で、回分晶析実験を試み、槽内の溶液をオートサンププラーで連続的に採取し、反応成分の経時的変化を測定するとともに、得られた結晶の特性について知見を得た。この結果、濃度低下速度は、イオン積と溶解度積の差の1.14乗に比例し、その速度係数は、初期のイオン積の関数で表すことができた。また、この速度、および結晶核生成までの待ち時間が、核発生速度に影響を及ぼし、結果として、MAP結晶の形態が大きく変化することを明らかにした。さらに、添加するマグネシウム塩の種類により、除去特性が変化することを見いだした。以上より、汚泥の固液分離水中に含まれる窒素、リンをMAP結晶の形で除去回収できる可能性を示すとともに、そのプロセスとして、汚泥の分離水を、MAP晶析プロセスで処理した後、生物学的脱窒素法で残存する窒素分を除去するシステムを提案できた。
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