大都市において汚泥を集中処理する構想、いわゆる汚泥処理基地構想を想定し、汚泥処理の過程で排出される汚泥返流水中のアンモニア、およびリン酸イオンの除去方法の開発が求められている。本研究では、MAP(リン酸マグネシウムアンモニウム6水塩)の晶析現象を利用した排水中の窒素・リン除去プロセスの開発を目的として、その晶析特性と除去特性の関連について、基礎的検討を行った。まず、MAP結晶の晶析特性(対象結晶を支配的に晶析させる排水の水質特性・操作条件)を明らかにするために、回分晶析実験を試み、選択的生成条件(温度、pH、Mg/Pモル比、NH4/Pモル比)を見いだした。この結果に基づいて、回分反応晶析実験を試み、Mgイオンおよびリン酸イオンの除去過程とMAPの晶析過程の関連について検討し、最適除去率を得るためのpH範囲、Mg/Pモル比を明らかにするとともに、その条件での、MAP結晶の生成過程をSEM観察による形状、および粒径の測定などにより、核化・成長現象に基づいて考察した。同時に、MAPの固液平衡関係で、決定される液中のアンモニア、リン酸イオンの濃度を低減するための、アルコール添加法についても検討し、溶解度積を1/2に低下できることを明らかにした。以上よりMAPの生成過程が、反応過程A(マグネシウム、アンモニア、リン酸イオンの反応)、拡散過程B(イオンおよび反応で生成された分子あるいはその集合体の結晶表面への拡散)、および結晶表面でMAP結晶が晶析する過程C(表面集積過程)が直列した過程になることを示した。これより、MAPの反応速度は、比較的遅いので、イオンの除去の側面から見ると、A過程が律速となる。しかし、粒子を大きくすることを目的とする場合、C過程が律速となり、律速過程に応じた操作条件を選定する必要があることを明らかにした。これらの結果に基づいて、晶析速度と装置設計法の関連より考察し、液側の物質収支あるいは、晶析速度に基づいた連続装置の設計法について、その設計手法を提出した。
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