研究概要 |
低級アルカン特にプロパンやブタンを脱水素して反応性の高いプロピレンやブテンとし,これを原料として付加価値の高いアクリル酸,メタクリル酸,アクリロニトリル,メタクリロニトリル,無水マレイン酸に変換することは工業的に極めて重要である。しかし,最近では低級アルカンを直接酸化してこれら目的の化合物を得るための触媒の探求が行われている。(VO)_2P_2O_7触媒によるブタンから無水マレイン酸合成は工業化された例である。この触媒の酸化機能について考えると,ブタンはリン酸塩が持つルイス酸点によって水素アニオンを引き抜かれカルベニウムイオンとなり,さらにブロトンが引き抜かれてブテンとなる。生成したブテンは(VO)_2P_2O_7が持つ二重結合性の格子酸素によるアリル酸化によって目的の無水マレイン酸にまで酸化されるものと考えられる。 (VO)_2P_2O_7はルイス酸点と二重結合性活性酸素種を持つ二元機能を備えた触媒であると云える。この(VO)_2P_2O_7の触媒機能の観点から低級アルカンの選択酸化触媒として持つべき機能の検討と新しいタイプの触媒探索を行った。 5価の金属からなる二重結合性酸素を持つtetragonal型M^<5+>OPO_4触媒はプロパンのアンモ酸化に対して機能し,生成物中のアクリロニトリル/プロピレンの割合はリン酸塩中の5価の金属によって異なり,V>Mo>Nb>Taとなり,リン酸塩の二重結合性酸素の結合強度に依存することを見出した。また,(VO)_2P_2O_7触媒に2価金属からなるリン酸塩を加えるとブタンの無水マレイン酸への酸化活性が向上することを見出した。この活性向上効果は,M^<2+>_3(PO_4)_2>M^<2+>_3P_2O_7>M^<3+>PO_4の順位となった。
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