研究概要 |
ピッチの溶融状態から生成する炭素質微粒子であるメソフェーズ球晶(球晶)は、成分縮合多環芳香族分子が層状に積層配列しており、表面には芳香環のエッジが露出している。このエッジ水素を利用した表面修飾によって機能材料化が図れるものと期待できる。本研究では、官能基導入反応としてシリル化、界面反応として無電解金属メッキを取り上げ以下の研究実績を得た。なお、比較のため、気相から生成し、表面に芳香環の面が露出しているカーボンブラック(CB)も試料として用いた。 1.シリル化反応 (1)試料を硝酸酸化した結果、表面に導入された酸性官能基(‐OH,-COOHなど)は、球晶の方がCBよりも多く、両者の積層構造の違いが反映された。元の球晶は疎水性であったが硝酸処理を施すと親水性となった。(2)酸化球晶とトリクロロアルキルシランとを反応させると、約10^<18>個/m^2のシリル基がを導入され、導入数はアルキル鎖長(メチル、n‐オクチル、n‐オクタデシル)に依存しないことが明かとなった。(3)シリル化球晶は、疎水性に転じたが、CBは親水性のままでありシリル基は導入されなかったものと推察された。 2.無電解金属メッキ (1)導入した酸性官能基はアルカリ性では解離して負に帯電していることを利用し、無電解金属メッキの触媒となるPd(NH_3)_4^<2+>を酸化球晶表面に担持させた。なお、一般的なPdCl_2は担持されなかった。(2)硫酸ニッケル、次亜リン酸ナトリウムから成るメッキ浴を用いるとPd種を担持させた球晶は、表面が一様にNiで被覆された。膜厚は、pH7で0.7μm、pH8で2.5μmであった。(3)未酸化球晶はPd種が担持されず、Niメッキも進行しなかった。(4)CBは、凝集した二次粒子全体がメッキされ、個々の粒子をメッキすることはできなかった。(5)pH7でNiメッキした球晶の磁化は27emu/gであり、バルクNiの半分程度の大きい値を示した。(6)同様な手順で酸化球晶にCuメッキを施すことができた。Cuの場合は、一様に表面を被覆するのではなく、針状に析出した。
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