研究概要 |
1.シンコニジン修飾Pd触媒による(E)-α-フェニルけい皮酸の不斉水素化反応 (1)各種担持Pd触媒の活性・選択性に対する,触媒調製条件,予備還元の影響,担体効果を調べ,200℃付近で予備還元したPd/TiO_2が最も有効であることを見いだした. (2)触媒上の反応基質および修飾剤の吸着量に対する担体の影響が大きいこと,適度の表面積と適当な量の酸点および塩基点を持つ担体が有効であることを示した. (3)CO吸着により測定したPd分散度と不斉選択性の間の関係および触媒表面の残存塩素の影響を示唆するデータが得られた. (4)極性溶媒の方がよいこと,水素圧や基質濃度は小さい方がよいことなど,Ptーシンコナアルカロイド系触媒によるα-ケトエステルの不斉水素化反応の場合とは異なる傾向を示すことを明かにした. (5)以上の知見に基づいて設計した5%Pd/TiO_2触媒を用いる反応系で,固体触媒によるアルケンの不斉水素化反応としては世界最高の光学収率(72%e.e.)を得た. 2.反応機構の検討 (1)異なる修飾剤濃度下で光学収率の経時変化を調べ,Pd上の反応基質と修飾剤の吸着平衡が重要であることを示した. (2)上記の結果や反応条件依存性に基づく速度論的な反応機構の考察および基質や修飾剤の構造の影響の検討により,今後,不斉発現のメカニズムを追求する予定である.
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