研究概要 |
免疫複合体(以下ICと略す)は抗原・抗体から形成されたものである。こういったICが生体内だ上手く処理されない場合は血液循環に関与する臓器に沈着し、特に腎臓に破綻を与え、危篤な腎炎を起こす。本研究はin vitroでの免疫複合体除去能の確立と除去機序の解明を目的とする。特徴は生体の機能を持つ網内細胞そのものを免疫複合体の除去に用いることである。網内系細胞の表面にはFc、C3bレセプターが存在するため、免疫複合体を認識し、運搬及び貧食により処理される。我々はHL-60,U937,K562などの血球前駆細胞及び腎糸球体上皮細胞SGE1にC3bレセプターをコードするヒトcDNAを導入して、レセプターの大量発現をを確認した。また腎臓に沈着しやすいDNA・抗DNA抗体のIC作製して、腎糸球体細胞に発現したレセプターのICへの除去機序及び除去能を確認した。 平成7年度は血球前駆細胞の分化誘導及び抗DNA抗体の作製の実験を行ったが、分化誘導された細胞は誘導剤の毒性により、レセプターの長期発現が不可能であることが分かり、遺伝子操作の方法を切り換えた。また赤血球前駆細胞の他、腎糸球体が入手したため、研究目的に近い実験材料を切り換えた。一方、抗DNA抗体を生産するハイブリドーマの作製について、安定なクロンを得られたが、実験材料とする抗体と抗原のIC特性を確認するため、抗体の大量生産、分離、及び抗原の精製をさらに行う必要である。従って、平成7年度の実績は血球細胞の分化誘導、C3bレセプターをコードする遺伝子のクローニング及びレセプターの発現を、それぞれ日本化学工学会(札幌)及び日本生物工学会(九州)にて口頭発表を行った。 平成8年度は実験材料の樹立及び実験方法の確立が進んでいるため、遺伝子導入により細胞のレセプター発現、免疫複合体の作製及び機能化細胞の免疫複合体への結合機序についてを、それぞれ日本化学工学会(京都)、日本生物工学会(名古屋)、アジアバイオエンジニアリング学会、アメリカ細胞生物学会にて口頭発表をした。研究論文の掲載は次項に示す。うち全論文2報、学会proceedings2報は掲載され、また2報は印刷中である。
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