硫黄酸化細菌Thiobacillus thiooxidans菌体の酸性ホスファターゼ(APase)が硫酸によって活性化される現象の解明と硫酸イオン測定への応用を研究した。 p-ニトロフェニルリン酸を基質として菌体のAPase活性の特性を解明した。活性は硫酸イオンによってのみ著しく活性化され、他の無機イオンによって活性化されなかった。 pH3.0、37℃ 基質濃度0.83mMで0から0.6mMまでの硫酸イオン濃度と酵素活性が比例関係にあることが示され、活性測定によって硫酸イオンの定量ができることが明らかとなった。菌体を用いた硫酸イオン測定における相対標準偏差は約2%であり、雨水、河川水および水道水中の硫酸イオン濃度測定値クロラニル酸バリウム法の測定値とほぼ一致することがわかった。 グルコース-6ーリン酸(G-6-P)を基質として用い、硫酸イオンの連続測定を試みた。菌体のAPaseは硫酸濃度に応じて活性化され、G-6-Pを分解してグルコースを生成する。このグルコース量をグルコースオキシダーゼ(GOD)を用いて測定することによって硫酸を定量した。また、菌体を加熱処理すると、硫酸によるAPaseの賦活効果が増大することが見いだされた。加熱処理菌体を固定化して酵素アクターカラムを作り、GODを固定化して酸素電極に装着して酵素センサーを作製した。カラムに試料を含む緩衝液および洗浄のための緩衝液を交互に送液して連続反応を行った。pH4.0、50℃、基質濃度10mMで電極応答値が0から1mMまでの硫酸イオン濃度と比例関係を示した。本測定システムによって試料中の硫酸イオン濃度が高い再現性で測定できることが明らかとなった。
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