本研究は、微生物の新機能開発研究の一環として、地球環境問題における重要な課題である廃棄物処理及び再利用について汎用プラスチックの微生物分解を追求するものである。現代の社会生活を支える膨大な量の汎用プラスチックは、自然界の物質循環サイクリルからはずれてまったく生物分解を受けないと考えられてきたが、本研究の結果、非水溶性の合成ポリマーとして極めて広範囲に利用されているポリエチレンの生分解性の可能性が明らかとなり、また、水溶性合成ポリマーであるポリアクリル酸ソーダの微生物分解についても新しい知見を得ることができた。 1)ポリエチレン分解微生物の分離 各種の土壌、汚泥などを分離源として、平均分子量約30、000の低密度及び高密度ポリエチレンを資化する微生物の分離を行った。溶媒処理によりポリエチレンを均一に分散させた寒天平板を作成することにより、数種のポリエチレン分解能を持つ微生物を初めて分離することができた。 2)ポリエチレン分解条件 高温ゲル浸透クロマトグラフィーを用いることにとり、ポリエチレンの分析が可能となり、残存ポリエチレンの分子量分布の変化を観察することができた。更に、分離微生物のポリエチレン分解能を高めるため、ポリエチレン物理化学的前処理について検討した。紫外線処理、金属イオン処理、熱処理などを行ったが、これまでのところ顕著な効果を認めるまでには至っていない。 3)ポリアクリル酸ソーダの分解 2〜10量体のアクリル酸ソーダオリゴマー分解が、3種の微生物の混合共生系のうり行われることを見いだし、セルソーターを用いる共生系の解明に着手した。
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