研究概要 |
本研究は,アルコール醗酵性のZymomonas属細菌に見出した糖転移酵素(フルクトシルトランスフェラーゼ,FTase)とNADP結合型酸化・還元酵素(グルコース:フルクトースオキシドレダクターゼ,GFORase)の構造・機能相関を明らかにするととも,これら酵素機能を蛋白工学的に改変・改良して,医薬品や食品添加剤としての新規な糖アルコール,配糖体,およびバイオポリマーの酵素合成を目的としている. 1. FTaseの構造・機能相関の解析 化学剤処理によりFTase遺伝子にランダム変異を導入して,スクロース加水分解活性,糖転移活性,および糖鎖伸長活性が変化した変異酵素を多数取得した.改変酵素の変異部位を特定することにより,FTase遺伝子のC末領域が活性発現に,N末領側の領域が糖鎖伸長活性発現に重要であることを明らかにした.次に,FTaseと他微生物由来類似酵素の一次構造を比較して,FTase間に保存される5つの相同領域を見出した.さらに,ランダム変異の結果から推定したC末側触媒ドメインのアミノ酸残基を対象としてアミノ酸置換を行い,Asp278とHis296が糖転移反応と基質認識に関与していることを明らかにした. 2. GFORaseの構造・機能の解析 精製GFORaseのN末アミノ酸配列と内部アミノ酸配列をもとに合成したプライマーを用いZ.mobilisの全DNAをテンプレートとしてPCRを行い,約500bpのGFORase遺伝子の一部をクローン化した.さらに,GFORaseの補酵素保持構造の特徴を比較検討するために,申請者が新規に見出したNAD(H)結合型酸化還元酵素であるホルムアルデヒドジスムターゼ(FDM)遺伝子をクローン化し,その補酵素結合ドメインを形成すると推定したアミノ酸残基へのアミノ酸置換を導入して,活性発現と補酵素結合との相関を明らかにした.
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