研究概要 |
テトラメトキシシラン(TMOS)とアルキル基を含む有機シランとの混合物を前駆体として,ゾル-ゲル法により生成する有機-無機ハイブリッドゲル中へリパーゼを包括すると,固定化標品の活性及び熱安定性が著しく向上する.本研究では,ゲルの生成場を,(1)W/Oマイクロエマルション中,もしくは(2)担体表面上とする二通りの方法を検討し,得られる固定化標品の諸性能について検討した.テスト反応としては,酪酸とイソアミルアルコールもしくは(±)ーメントールからのエステル合成を取り上げた.その結果,以下に列記する知見を得た. (1)のエマルション包括法については;(1)各種界面活性剤を用いて,シリカキセロゲル固定化リパーゼを調製し,そのエステル化活性を調べたところ,Brij97が最も高い常温活性を与えた.(2)前駆体にメチルトリメトキシシランを加えてハイブリッドゲルとすることにより,そのエステル化活性は一層向上した. (2)の担体表面包括法については;(1)TMOSと複合化させる有機シラン多数を検討したところ,プロピル基以上の鎖長を有するアルキルトリメトキシシラン,及び複数のメチル基を含むメトキシシランが固定化リパーゼの常温活性と耐熱性を大幅に向上させた.(2)担体粒子としては,市販のセライトなどの珪藻土類が最大のエステル化活性を与えた.(3)担体上に形成させるリパーゼ包括ハイブリッドゲルには,エステル化活性に対する前駆体混合物の配合比及びゲル量の最適値が存在した.(4)以上の結果,最適条件で調製した固定化リパーゼの最高使用温度は周知のものより20〜30°C上昇した. 以上のような酵素性能の大幅向上の理由としては,有機-無機ハイブリッドゲルの表面近傍における適度にタイトな包括によるタンパク質の高次構造の安定化,ゲル-基質間の親和性,リパーゼの疎水性部位とゲルのアルキル基間の疎水性相互作用などが挙げられる.
|