本年度は有機性廃液を原料にして、まず廃液中のBOD源を嫌気処理により有機酸にし、引き続いて光合成細菌によってこの有機酸を菌体内に生分解性プラスチックであるポリヒドロキシアルカノエ-ト(PHA)として蓄積させることを目的に研究を実施した。生分解性プラスチックの合成条件はC/N比の大きいことであるので、廃液としてはBODは20000ppmと非常に高いが、窒素源は200ppm程度と比較的低いパームオイル廃液をとり上げた。 本研究ではまず、パームオイル廃液を廃液処理場より採取したスラッジを用いて嫌気的に処理したところ、廃液中のBOD源は有機酸に効率的に変換された。有機酸の組成は処理pHに強く依存し、pHが低いほどギ酸の含量が増加した。pH7で嫌気的処理すると、廃液中のBOD源は70%以上の収率で酢酸とプロピオン酸に変換された。合成廃液による実験で、光合成細菌はギ酸を迅速に処理できず、PHAにも変換されなかった。一方、pH7の嫌気処理に基づいて生成された酢酸とプロピオン酸は、光合成細菌により完全に処理され、50%の対有機酸収率と50%以上の含量でPHAを菌体内に蓄積させることができた。一方、実際にパームオイル廃液を嫌気的に処理したものを原料に、光合成細菌を用いてPHAを合成させたところ、そのポイントは、光合成細菌によって廃液を処理させる前に嫌気処理で用いられたスラッジを取り除くことであった。これはスラッジが光合成細菌が光を受ける機会を少なくするためと考えられる。本研究を通じ、実際の有機廃液の処理と生分解性プラスチックの合成という当初の目的は達成することができた。
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