研究概要 |
腎不全患者の腹腔内に電解質水溶液を貯留し、内蔵表面を覆う腹膜を介して、体内に蓄積された毒素を除去する治療法が腹膜透析法である。本研究課題申請者は、既に電気マッサージ器や低周波治療器を用いて、腹部に体外から非侵襲的な振動を与えることで、毒素の除去速度を飛躍的に増大できることを報告した。本研究では超音波の振動を利用して、体液からの老廃物の除去速度を促進するための基礎技術を確立した。 尿素(分子量60)やクレアチニン(分子量113)を用いた家兎(2.0〜2.5kg)in vivo実験では、0,28,45,100kHzの超音波により、最大60%の透過促進効果が得られ、また最大効果が得られる周波数が28kHz近辺であることがわかった。この現象は、家兎腹腔内から剥離した壁側の腹膜を用いて行ったクレアチニンのin vitro透過実験でも確認することができた。このことから、in vivoにおける透過促進効果は、膜の透過係数が周波数に依存的に変化することによってもたらされるものと考えられた。 本年度は得られた腹膜透過促進効果の可逆性・不可逆性について、家兎in vivo実験で検討した。まず、超音波非照射下においてコントロール(#1)の透過実験を行い、続いて、超音波を照射しながらコントロールと同じ透過実験(トライアル実験)を行った。最後に再び超音波非照射下で、コントロール(#2)の透過実験を繰り返した。この結果、コントロール(#2)の結果はコントロール(#1)の結果とは一致せず、超音波照射下で行ったトライアル実験の結果とほぼ一致した。このことより、超音波による透過促進効果には、腹膜透過係数の不可逆的な増大が関与している可能性が示唆された。
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