本研究は、透明半導体電極膜や半導体ガスセンサーとして用いられる酸化スズ系機能材料の表面感度を選択的に高め、状態分析する方法として^<119>Snの視斜角転換電子メスバウアー分光法(CEMS)を開発することを目的とした。 ^<119>Snの内部転換電子のエネルギーが19.6keVと高いために固体の飛程が約2μmと大きくなる。そのため従来の方法では表面感度が低い。そこで23.8keVのγ線を低入射角(5°以下)で試料表面に照射し、より薄い表面層のメスバウアースペクトルが測定できるように視斜角CEMS用のガスフロー比例計数管検出器を試作し、測定シスメムを検討した。数100nmの試料に対してHeガスフロー比例計数管による電子検出によるCEMS測定は十分可能であることが確かめられた。測定時間が長いために固体試料から放出される転換電子のエネルギーを弁別しながら同時に最大4つのメスバウアースペクトルが得られるように測定システムを改良して、酸化スズ膜の層別分析膜の準備を行った。 一方、透明電極半導体材料であるインジウム・酸化スズ(ITO)中に含まれるスズの化学的環境について再検討し、ITO中のインジウム原子に置換し得るスズ原子の電場勾配が異なる2種のダブレットピーク(bサイトとdサイト)及びインジウム原子に置換し得ないスズ原子のピークに分け、それらの強度とスズ含有量と関係を明らかにした。これらはキャリヤ-電子のド-ピング効果と対応した。 また、酸化スズのガスセンサーについてはAuイオン及びFeイオンの注入効果について調べた。今後は、これらの試料の解析に視射角CEMSを応用する計画である。その他、CEMSのさまざまな応用についてレビューとしてまとめた。
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